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退試合〜関西高校vs玉野光南高校

 6月20日(火)、夕方の倉敷マスカットスタジアム。
学校を終えた関西の生徒は電車で、光南の生徒は
マイクロバスでやって来た。
毎年恒例、3年生の引退試合が間もなく始まろうとしている。
この日の主役は、夏に背番号を付けられない3年生たち。
3年間一度も付けられない選手も大勢いる。
彼らにとって、マスカット球場で試合をするのは
この日が最初で最後だ。
だから、グラウンド整備もコーチャーも主力が務める。
球審もいて、アナウンスもしっかりある。
電光掲示板にも名前が表示され、扱いは公式戦なみ。
ただ、今日だけはどんなプレーをしても笑って済まされる。
言葉は悪いが、“何でもアリ”なのだ。


円陣で気合いが入りすぎて木待検一くんが押し潰された・・・みんな爆笑

そうとなれば、関西はベンチを含めてやりたい放題である。
まずは初回にいきなり中西豪くんがイチローのモノマネで打席へ。
1死一、二塁から二ゴロかと思いきや、セーフ。
つづく「
ライトなんてやったことないっす!」な山本雄介くんが
きっちり犠飛で、先制点をあげた。
先発は木下峻哉くん。
ベンチからは「
ファンタ!ファンタ!」の励まし・・・いや、野次。
1年生のころ、ファンタばかり飲んでいたことから、こんな呼び名がついた。
そんな味方の野次にビクともせずに、2回を内野安打2本に抑えた。


イチローのモノマネで打席に入る中西豪くん      2回無失点の木下くん

2回、この回先頭の中村隼也くんが相手エラーと盗塁などでチャンスを作ると
瀬尾晃弘くんが笑いながら監督さんのサインに頷き、犠飛で2点目。
ホームインした中村くん、得意のバック転を披露し、ベンチは「
ひゅ〜〜」と盛り上がった。
3回には2死一、二塁からまたも山本雄くんの適時打などで5点目。
ここで、光南の一塁手・藤原竜一くん。
ランナーが出るたびに、なぜかニコニコしていたのが印象的だった。
光南先発の谷原直弥くんは5点を奪われても、投げ続けた。
光南のブルペンを見ても、準備している選手はいない。
途中、代打を出されたが、特別ルールで指名打者制になった。
聞くところ、もう一人の投手が肩を痛めており、投手が彼しかいないからだそう。
だから、何が何でも谷原くんに完投してもらうしかなかった。
何点取られても懸命に投げる谷原くんに、最後にドラマが待っている。

 
ヘルメットかぶりながらバック転する中村隼くん   本日3打点の山本雄くん

さて、その頃のスタンドは1、2年生たちが応援している。
スタンドもやりたい放題で、2年生に「いけ」と言われたのか
1年生がネット裏を越えて相手スタンドや2階席まで走って応援していた。
しかも、「戻れ」の合図にイジワルな2年生たちはカウントダウンを始めてしまう。
味方が守っている間は、メガホンを頭にかぶせたり、終始楽しそう。
試合前に「
応援もしっかりやりますからね!」と2年生たち。
試合後半、なかなか面白い応援歌が流れるのだが、それはあとのお楽しみ。

 
2階席まで走ってきた1年生たち                    先輩にメガホンをかぶらされる・・・

 3回からマウンドにのぼった榧木賀隆くんがいきなり2死三塁のピンチ。
打球はセカンドへ飛ぶも、宮本丈嗣くんがエラーし、1点を失った。
宮本くん、「
悪い、悪い!」と笑いながら謝る。
同じ関西出身で仲良しな二人。
点灯した4回は無失点に抑えた。
5回、関西打線が再びつながりを見せる。
相手エラーなどもあり1死満塁。
ここでバッター木待検一くんがいきなり初球を中前へ2点適時打。
これにはベンチも大盛り上がり。
小林正典くんとそろってチームのムードメーカー的存在の木待くん。
その一方で、瀬尾くんとともに進学クラスに所属し、文武両道を貫いている。
補講で練習に遅れることもしばしば。
それでも3年間みんなと頑張ってきたそのご褒美になった。

 
帽子を取って榧木くん(左)に謝る宮本くん(右)            後ろの仲間の声援を受けて打席に立つ木待くん

 実はこの試合、得点のほとんどが失策などのミスがからんでいる。
両チームあわせて5失策だったが、それでも監督らはニコニコ。
いつもは「何やっとんのじゃ!」という声が聞かれるベンチからも
はいはい、OKよ〜」という言葉。
5回裏、関西の投手は田中勇希耶くんに交代した。
しかし、田中くんは2者連続の四球。おまけに自らのミスで
無死満塁のピンチを作ってしまった。
ストライクが決まるごとに、ベンチからは「OKOK!」「次もストライクやぁ!」の声。
仲間の声援を受けた田中くんが、3番・古川達彦くんから三振を奪う。
ベンチは大盛り上がりで拍手喝采だった。
 だが、そこから三塁打などを浴び、ジリジリと光南が追い上げてきた。
ここでタイム。
内野を集め、伝令役には上田剛史くんが・・・
何を伝令したのかわからないが、上田くんはネット裏上段を指差す。
みんな笑う・・・ どうやら田中くんに「あそこ(ネット裏上)に向かって投げろ!」と指示した模様。
全く励ましの伝令になっていない・・・(苦笑)
しっかり審判に一礼しベンチに戻ってくる途中でパフォーマンスを披露。
1回やっただけで、ものすごい恥ずかしがっていた。
(その一部始終は以下の写真をご覧下さい)


上田くん(21)がマウンドへ行き、みんなが笑い始める。     田中くんに「ネットへ向かって投げろ!」の意味のわからない指示・・・

 
そしてこのパフォーマンスでベンチへ戻る(笑)    自分のやったことが恥ずかしくてうつむく

 5点を失った関西だが、その裏を「流れを食い止めた」と中西建くんが3人で抑える。
そして7回の攻撃。
1死一塁の場面でネクストには小林くんが!
ウォーミングアップする姿から何かやってくれそうな予感が漂う。
スタンドからも「こばやしーなんかやれー」の期待の声が。
小林くん、体の柔らかさをいかした、お得意の柔軟体操を披露する。
光南ベンチをも釘付けにし、笑いと拍手が沸き起こった!
(しかもさりげなく安井くんのフォームもマネしていた)
結果はセカンドフライに終わったが、ネット裏からも拍手が送られた。


すごすぎる小林くんの体・・・


後ろの光南の子たちも拍手したり、笑ってくれた!

7回からは「アップシューズを忘れた・・・」な関西の忘れ物王・西本政裕くんがマウンドへ。
するとセカンドには江浦滋泰監督の姿が!
ちゃっかり“1番宮本君にかわりまして、セカンドに江浦が入ります”のアナウンス付き。
これにはボールボーイの1年生トリオも「ボールが飛んでほしいですね」と終始ニコニコ。
ベンチからは「セカンドー!声出てないぞー!」という声が!!
そんな異様な雰囲気のなか、西本くんはランナーを出したあと、三者三振。
江浦監督はホッとしたような表情でベンチに戻ってきた。
ベンチ前の円陣の中心は上田くん。
よし、OK!」と気分は監督だった。


セカンドの守備につく江浦監督

他の首脳陣も江浦監督につづく。
8回1死一塁でスコアボードには代打「金太郎」の文字が・・・
すると、ベンチ内の選手が全員外へ出て、ひざまずいた。
金太郎、誰かと思えば浜田紳吾コーチだった。
関西の本塁打記録(安井くんが抜きました)を持つスラッガー・浜田コーチ。
その打棒に選手も期待を寄せたが、残念ながら三振。
そのあと、「まさと」こと高森雅人コーチも打席に入ったが三振・・・
がっかりした選手たちは即座にベンチに戻ってしまった。


金太郎な浜田コーチ(左)とまさとな高森コーチ


ベンチ前でひざまずいて首脳陣の一発を期待する選手たち


二人とも三振に倒れ「帰ろ!」とベンチへ引き上げる・・・           あまりのショック(?)に倒れこむ小林くん

関西の首脳陣が出てくれば、もちろん光南もつづく。
8回裏1死一、二塁から代打は奥山コーチ。
光南の選手たちもベンチの前へ出てきて、神に祈るような仕草を始めた。
それが届いたのか、左前へ運ぶ。満塁。
ここで、4番小倉浩一くんが左中間へ抜ける逆転適時打を放った。
お祭り騒ぎの光南ベンチ。
ここで関西は久保裕介くんにバトンタッチ。
バッターは谷原くんのかわりに途中から指名打者で入っている入谷光洋くん。
150球近く投げている谷原くんのためにも、と思ったのだろうか。
打球はライトの前にポトリと落ちるダメ押しの適時打になった。

追いつきたい関西は最後の攻撃を迎える。
途中出場の石丸文弥くんが、左中間に抜ける当たり。
外野が追いかけていく間に石丸くん全力疾走。
ベンチからの「いけー!まわれー!」の声に押されて
ランニングホームラン。1点差に迫る!
ベンチ前では、なぜか木待くんがお祝い(?)の前転を披露していた。
なおも1死から久保くんが右前安打でつづく。
バッターボックスには「1番セカンド、江浦」が入る。
江浦監督、フルカウントまで粘る。
スタンドからは和田アキコ出演の某テレビCMの応援歌が流れる・・・
(どのCMかはご想像にお任せしますが、のちに監督さんは
“何やってもいいからって何だあれは!”とお怒りでした)
打球は三塁に転がるも、弾いてしまう。
江浦監督ももちろん全力疾走でセーフ!
つづく山川裕也くんも落ち着いて四球を選び、満塁!!
橋田和則くんは倒れてしまうが、まだ2死満塁。
打席には、前のイニングから一塁の守備についている守安基弘コーチ。
フルカウントからファールでカットして粘る。
マウンドの谷原くんにも疲れが見え始め、ふーっと深呼吸。
見守る両校ベンチ・・・
守安コーチ、空振り三振。
光南ベンチはまるで優勝したかのように、谷原くんにむかって走り出した。


ランニングホームランに万歳の石丸くん         お祝いの3連続前転を披露する木待くん

 
祈る光南の選手・・・(笑)                          谷原くん(1番)にむかって走るベンチの光南ナイン

時刻は間もなく21時。
使用制限時間ギリギリまで約3時間にわたり白熱した試合が展開された。
3年間、苦しい練習に耐え、退部することなくここまでやってきた。
何度も辞めたいと思った選手もいるだろう。
それでも、同期の仲間がいたからここまで続けることができたはずだ。
最後の夏、ベンチには入れないかもしれない。
でも、自分なりの努力に納得できているのなら、それでいいと思う。
敗戦投手に悔し涙を流した西本くんは、翌日さわやかに言い切った。
応援、しっかりやりますよ!
今日、自分たちのためにトンボをかけてくれた仲間へ
夏、声でしっかり恩返しするつもりだ。

アルバムはこちら

◆出場選手◆

関西 光南
C宮本丈嗣
4江浦(江浦滋泰監督)
R東慎介
F杉山直聡
7山川裕也
E橋田和則
B中西豪
P金太郎(浜田紳吾C)
3守安(守安基弘C)
H山本雄介
9今井裕太
G中村隼也
P5まさと(高森雅人C)
D瀬尾晃弘
8石丸文弥
A木待検一
2小林正典
@木下峻哉
榧木賀隆
1田中勇希耶
1中西建
1西本政裕
1久保裕介
G藤原雄三
C高須涼
Pおっく(奥山C)
R八木(八木優宗副部長)
6萱(萱勝監督)
F古川達彦
A小倉浩一
DH入谷光洋
D安岡裕記
E4矢吹浩聡
B藤原竜一
H垣内亮
@谷原直弥

※スコアボードの表記をそのまま掲載。但し、選手は「姓」のみ。
せっかくなのでフルネームを掲載しています
※光南の交代の一部が不確かかもしれません
※光南・奥山コーチの下のお名前がわかりません

 

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