トップ戦績・特集>07*夏物語

 新チームが結成されて数日。
甲子園大会真っ只中のある日、グラウンドへ行くと
強い日差しのなかを、1、2年生が泥だらけになっていた。
8月を全員が関西グラウンドで迎えるのは
3年ぶりのことだ。
5季連続で甲子園に行けたことが
どれほど幸せなことだったか、心底実感した。

新チーム結成して約1週間が経とうとしても
主将、副主将などは決まっていなかった。
ただし、周りも薄々と「荒木だろう」ということは
感じ取っていたようだ。
当の本人も同じだった。
しかし、センバツのときには
自分の性格はキャプテンに向いていない」と言っていた。
首脳陣も荒木直人くんがそう思っていることを知っていたが
この世代を荒木くんに任せることに決めた。
私の勝手な想像だが、人間的に成長してほしいという願いも
込められていると思われる。
ここに、荒木世代の挑戦が始まった。

この日、江浦滋泰監督は所用で不在。
グラウンドには浜田紳吾コーチ、守安基弘先生、高森雅人コーチの姿が。
浜田コーチと高森コーチのコンビといえば、熱くてキツイ練習でお馴染みだ。
今日はちょっと長めにノックしよう」との声で、浜田コーチが内野へ
守安先生と高森コーチが外野へ歩いた。
守安先生は「汗かきたいからね」と、この暑さでも長袖着用・・・
ボール回しも長めに行い、内野手はポジション別に散った。
力のある1年生も補助とは別にそこには加わっている。
1、2年生は人数も多く、2年生28人という数字は
多いと感じた安井世代よりも1人多い。
個性的な選手が多く、正直何を考えているのかよくわからない子が数名・・・
「おとなしい(控えめ)」という第一印象を持った中村世代に比べれば
明るくてやんちゃな生徒の数のほうが多いかもしれない。
このチームの印象を浜田コーチは
ポジションいっぱい空いてるけえ、必死になってくると思うよ。
苦しい(メニュー)のをさせても、ついてくるけえ
」と
指導のしがいを感じ取っているようだった。
関西の激戦ポジションといえばセカンドだが
今年はファーストに2年生が集結した。
逆にショートは荒木くんと山本敦士くんの二人だけ。

 
山本くん(左)、荒木くんのさわやかショートコンビ       左から木村大治朗くん、1年生・髭昌佳くん、永田くん、
                                    石田和也くん、早野直人くんのファーストたち

ミスをするとその場で10回ジャンプ。
さらに気持ちのこもっていない返事だと「出とけ!」の浜田コーチの声が突き刺さる。
今日はサードを守る丹原郁一くんが該当してしまった。
もちろん、こういうときも仲間から優しい声はかからない。
出とけよ」と厳しいのだ。
元気いっぱいなのは、1年生の坂口裕一くん。
6月下旬、1年生と2年生による紅白戦があったのを観戦したが
そのときも1年生ベンチからは坂口くんの声が目立っていた。
先輩からもイジられて、かわいがられているようだ。
同じサードには物部拳佑くんもいる。
覚えているだろうか、彼がまだ入部したばかりの頃に
浜田コーチが「
物部氏になれんぞ〜」と話していた彼。
(※「05*春物語」を参照)
物部くんも当時からガッツがあって目立っていた選手の一人。
関西のホットコーナーはなかなか味のある選手がそろっている。

 
“氏”に昇格しそうな勢い?の物部くん

隅の方には、中村将貴くんと三角武成くんの3年生バッテリー。
セレクションを控えた部員は、ちょくちょくグラウンドに顔を出しているという。
三角くん、すでに髪の毛が茶色・・・ 首脳陣に怒られて、しょぼりんとしていた。
中村くんは関東の大学のセレクションを受けるとあって
東京、大丈夫ですかね」などと心配そうな顔も見せていた。
そして、ノックが始まって1時間以上経ったところで休憩。
(当然ですが、合間をぬって水分補給はしています)
打球の速さに定評のある(?)浜田コーチの顔からも汗が流れ落ちる。
しかし!!ここまでは、単なる序章にすぎなかった・・


汗が流れてる浜田コーチ          内・外野混ざって仲良く水分補給

外野手は右に左に前後に延々とアメリカンノック。
変なプレーが出ると、ノッカーのところまで走ってこなければならない。
足をフラつかせながら、必死にボールを追いかける。
頑張って走って届かなくても、それはそれで構わない。
大事なのは必死で追ったんだという姿勢だ。
坂道では投手陣が延々と走っていた。
坂道がデコボコになるくらい走れ!」の指示のもと
しっかり走りこんでいた。
エースナンバーを背負うのは重友翔太くん。
夏の大会、3年生最後となった玉野光南戦で先発している。
試合後、グラウンドに戻ってくると一番泣いていた。
気の優しさが顔に出ていた下級生時代から
少しずつキリっとした顔つきになってきている。

 
外野を右に左に頑張って走る中原将くん            坂道ダッシュに励む重友くん(左)と長安駿作くん

内野に目を戻すと、みんなの練習着が泥どろになっていた。
一人ずつ前へダッシュさせて捕球。
しかも、届きそうで届かないくらいのところにボールを落とす。
楽しそうな浜田コーチの表情は、選手たちにとって
鬼が笑っているのと同じような感覚だろう・・・
これも足腰を鍛えることにつながっている。
見ているぶんには、とても微笑ましい光景だ。
捕手の高田裕一朗くんは顔が真っ黒。
投手陣がその様子を見ながらクスクスと笑っている。
外野でも同じようなことをやっている。
植本汰智くんの紺色のシャツは茶色になっていた。
(汚れたシャツを洗って干しているのがタイトル画像です)
締めはファーストの永田僚くん。
いつものことなのか、みんな口をそろえて「永田いけ!」とゲキだ。
こういう役回りを知ってか永田くんもしっかり答えていた。

 
口も泥いっぱいの高田くん              苦しそうな永田くんと仲間たち・・・。左から植本くん、1年生・古田隆之介くん、
                              木村大くん、石田和也くん、中原くん

さて、この日は午後から紅白戦を行った。
数日後に控えた大阪遠征メンバーを決める大事な大事な紅白戦。
もちろんこの結果だけでなく、今までの実績も加味される。
レギュラー当確メンバー以外の選手たちが出ているのだが
グラウンド脇で、良い結果を残せなかった選手が落ち込んでいた。
あいつらもすごい必死で頑張ってるんですよ」と、あるレギュラー選手が一言。
過去に、自分も同じような経験をしているからこそ
出てきた言葉なのかもしれない。

この夏休み期間中、練習試合では勝利が続いていたが
遠征中に対戦した大阪桐蔭に15失点して負けた。
マスクをかぶっていた吉村勇人くんは
情けないです。振りが全然違うし、もう投げさせる球がありませんでした。
上には上がいることを思い知らされました
」と沈んだ。

まずは少しでも中村さん(のような主将)に近づけるにしたい」と
決意を語る荒木くん。
そのためには、27人の同期の協力が必要不可欠になってくる。

 

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