トップ戦績・特集>08*秋物語


※今回は複数日分の練習風景等を1つにまとめています。
また、悪天候のため、動きのある写真を撮ることができませんでした。

昨年6月、当時1年生だった坂口世代と、2年生による紅白戦があった。
プレー写真を狙おうとカメラをグラウンドへ向けるが、集中できない。
やけに三塁側ベンチからの声が耳に残るのだ。
声の主は、現主将の坂口裕一くん。
彼に引っ張られるように、他の選手も声を出している。
それから1年後の今年5月、辛口の年輩ファンの方が頬を緩めながら教えてくれた。
わしは、坂口くんが大好きじゃ。練習試合を見てても彼の存在感は抜群じゃ。
ええチームになるで!

個人的には勝手に不安も抱いていた。その1つが、県外出身者が多いこと。
部員20人のうち、愛知3人、大阪2人、兵庫1人、広島2人。
県ごとに仲良しグループができて溝が生まれないだろうか・・・
しかし、そんな心配は不要だった。
近年では1、2位を争う団結力の強いチームになった。
やや控えめだが、中村世代と重なる部分がある。
もしかしたら、オール岡山県民だった中村世代以上なのかもしれない。

新チーム作りは快調な滑り出しだった。
8月、近畿での練習試合で大敗したこともあった。
それをバネにしたことで、チーム全体の意識も変わったという。
圧倒的な強さはないが、強豪相手に白星を重ねていき、結果的に勝ち越しているという
勝負強さが見られるようになった。

地区予選を経て、対戦相手が倉敷商に決まったとき、再びチームの意識が変わる。
夏の甲子園出場校、地元紙にも「優勝候補筆頭」に挙げられている相手。
それならば自分たちが倒そう、と。
坂口くんは振り返る。
新チームから地区予選、地区予選から抽選会、抽選会から倉商戦、その後。
これまでを、4つの時期に分けると、抽選会から倉商戦までの練習や雰囲気が
一番良かったと思う

試合は、2点ビハインドの8回裏、2死満塁で9番・杉本拓実くんが
走者一掃の適時打を放ち、劇的な逆転勝利。時計の針は午後7時をまわっていた。


ショートのポジションを奪った杉本くん              秋は4番を任された久保くん

しかし、中1日空いて挑んだ倉敷工との一戦。
チームは幸先良く先制するが、3回以降を無安打に抑えられてしまう。
何もできず、まさかの敗退。
試合終了と同時に多くの選手がベンチ前で涙を落とした。
気丈に慰める選手もいたが、控え室へ入ると、全員が大泣きした。
油断していたと言われても仕方がない。でも、そんなことはなかった。
審判のこと言う人もいるが、それは関係ない

敗退から2週間弱。グラウンドへ行くと、全然覇気がない。
最初は雨模様の天気のせいかと思ったが、そうではなかった。
敗戦からの切り替えができていなかった。
目先の目標を失い、モチベーションは下がったまま。
4つの期間のなかで、今が一番最悪だと思います(苦笑)
走る背中、声の出し方、すべてが“こなしているだけ”に見えてしまった。

ただ、倉工に負けたことで課題も見つけている。
まずは、戦い方。自分たちより強いと思われるチームには燃える。
一方で格下と決め付けると、相手に合わせてしまいがち。
練習試合でも無名の学校に苦戦するケースが見受けられる。
さらに、2年生が仲良しすぎて、闘争心が芽生えないところ。
坂口くんも「誰にでもチャンスがあると思って練習に取り組んでほしいんですけど・・・」と
一番気にかけている部分だ。
 引退した3年生が練習に加わった日。
岡村侑くんと吉村勇人くんがノックを打ってあげている。
引退すると首脳陣との距離も縮まり、微笑ましい光景だ。
そこで、中野幹雄くんがこんなことを言っていた。
夏のことなんですけど、やっぱりベンチに入って、試合に勝つって面白いなって思った。
スタンドで見てるより全然違いますよね

現役時代にメンバーとメンバー外の両方を経験している中野くんだから言えること。
坂口世代も仲良しチームではなく、仲間同士の真剣勝負を経た
ホンモノのチーム力を掴んでほしい。

 
ナイターのなかでティーメニューをこなす矢本くん 長く続く坂道を苦しそうに走る坂口くん

さて、時期は1年生大会直前。
グラウンド内では1年生中心のメニュー、練習試合が組まれている。

ボールボーイの田中健太郎くんが、ものすごい反応と瞬発力?でファールボールを追いかけていく。
トレードマークの白いVジャン姿。となりの久保昂平くんはノースリーブだった・・・
外野のスコアボードは三原司くんと森末尚揮くん、横山純くんが担当。
ボールに青いテープを巻きながら、得点盤をかけていく。
その後方では、森末くんのお父さん(父母会長)が草刈りをされていた。
お父さんは江浦監督や浜田コーチと同級生だ。
SBO係は本正貴大くんと矢本乾治くん。
矢本くんは、冷え込んだ日にもノースリーブで登場するなどチームきっての元気印だ。
本正くんといえば、上半身のムキムキぶりが気になっていた。
見ると、足元には筋トレ用具が・・・
本「いつも鍛えてますから
矢「前に家に遊びに行ったら部屋にもコレ(用具)があって、話しながらやってましたよ
本「でも、下半身が細いままなので、それが課題です
矢「僕は食べても全然太らないのが悩みです・・・
扉の開け閉めを藤原洋平くんが担当するなど、みんな1年生のために協力してくれている。

その間、2年生は空いているところで個人練習。
ただの個人練習ではなく、毎日自分で練習内容やノルマを設定している。
素振り、外周、ランニング、トレーニングなどなど。
もちろん少しずつハードルを上げていく選手も。
木村幸二朗くんは「そのカメラ、連写できないんすか?フォームが気になるんですよ」と
鏡とにらめっこしながらフォーム作りに余念がなさそう。
最もつらい練習と思われるのが外周だ。
グラウンドの周りはアップダウンの激しい坂に囲まれている。
そこを5〜10周走るのだが、「ぜぇ、はぁ、うぇ」と言った苦しい声がよく聞こえる。

 
なんとバットを4本も持っている木村幸くん    ボールボーイ役の左から髭くん、田中くん、久保くんの仲良しトリオ

みんなの苦手な練習メニューは、まだある。
ジムトレーナー・柘植崇さんによる筋トレだ。
筋トレがあるというだけで、表情が憂鬱になっている。
手首を鍛えるトレーニングでは、髭昌佳くんが苦痛のあまり体全体が大変なことに・・・
みんなニヤニヤしながら見守っている。
至福の時間」という本正くんだけは、楽しそうに黙々とメニューをこなしていた。
 ある日、浜田コーチの2人のお子さんがやってきた。
野球好きな息子さん。顔は浜田コーチと瓜二つだ。
息子さんのスイングや打球の速さを見ると
みんな「うえー浜田さんのピッチャーメニュー思い出すわ〜こえぇ〜」などと苦笑い。
お子さん2人は「うめちゃん」こと梅澤駿人くんのことが大好き。
一緒に外周を走ってあげるなど楽しそうだった。

練習終了後、おなじみのプロテイン(バナナ風味)を飲む。
このニオイを嗅ぐだけで、もう・・・ はぁ・・・」と、杉本くん。
味見したところ、何とも言えない機械的なバナナ味だった。
流し台では、徳武裕くんと森末くんが「さみぃ〜」と言いながら冷水で頭を洗っている。
帰宅するだけなのに、何がそんなに気になるのだろうか。

 
浜田さんの息子さんと楽しそうな梅澤くんと岡前良くん(左) シャドーピッチングする大家くん

あの倉工がセンバツ出場をほぼ決めた。
だからこそ、よけいに悔しくてたまらない。
しかし、ほろ苦く残る敗戦の思い出が
この冬、ナインの背中をきっと力強く押してくれるはずだ。

 

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