倉敷商にコールド負けを喫してから数日。
声は出ているが、選手の表情は決して明るいものではなかった。
元気印の岩本くんまで「勝てなくてすみません」と、頭を下げる。
敗れた日、グラウンドに戻って選手だけでミーティング。
荒木くんは自分の不甲斐なさを責めつつ、「ついてきてほしい」と協力を求めた。
ある選手はこんなことを打ち明けている。
「大会直前までチームの雰囲気も最高潮だった。
練習試合でも結果が出ていて、自信があった。・・・ただの慢心でした。
完敗してやっぱり弱いんだって自覚しました。
もう失うもなんてないです。夏は思い切りやるだけです」
荒木世代、県大会未勝利。このままでは終われないのだ。
ノック、スタート。
例年通り、2年生は白い練習着を卒業し、関T(Tシャツ)姿だ。
昨年12月以来の訪問だったため、下半身が見違えるほど太くなっていて驚いた。
「じゃろ〜」と、にんまりの浜田コーチ。
上級生のノックに参加していた2年生は田中健太郎くん、髭昌佳くん、緑川大陸くん、森末尚揮くん。
ちなみに、森末くんのお父さんはOBだ。
何人かポジションも変わっていて、山本敦くんはショートへカムバック。
ノック中はやっぱり岩本くんの高い声が耳に入ってくる。
初日はみんなが嫌いなノーエラーもあった。
ぐるぐると走る姿で、その選手のやる気具合がよくわかる。
緑川くんはボールを落とすまいと足で意地のキャッチ。
「え?え?おかしいんちゃう?」などなど、見ている首脳陣もニヤニヤ。
「裕ちゃん、たのむよー」という高田くんへのゲキも印象的だ。
ノーエラーで江浦監督の前をぐるぐる周る選手たち
外野からの中継をホームへ返す岩本くん。実に楽しそう・・・
サブグラウンドでは、補助に入らない下級生がティー中。
1年生25人も加わり、大所帯のチームにとってサブグラウンドはありがたい。
さて、1年生軍団だが、すべての行動がみんな一緒で初々しい。
ホースで水を巻くのも全員、補助待ちのときも固まってる。
ここで恒例の浜田コーチの名?迷言が飛び出した。標的は手槌くん。
「手槌なあ・・・打出の小槌みたいにならんとなあ」
南くんのボールを取ろうとする山本敦くんと見てる植田くん(1年)
ブルペンでは冨田くんが投球練習をしている。
半年前の状況を考えれば、エースナンバーは正直予想外。
新チームが始動した直後の大阪遠征。
そのメンバーを決める紅白戦で彼は投げていた。
(「07*夏物語」でも紹介している試合のことです)
ベンチ入りボーダーラインの選手たちが出場しており、冨田くんは打たれて降板している。
ネットに体をもたつかせて「行けれん・・・」と、がっくり。今でも思い出す光景だ。
私はこの紅白戦の重要さを知らず、思わず軽はずみな発言をしてしまった。
そこへ長安くんが「必死で頑張ってるんですから」と一言。
結局冨田くんは秋のベンチ入りも叶わなかった。
しかし、冬の間にサイドスローへ転向。並々ならぬ努力が実を結んだ。
中村くん(明大)は「冨田がエースですか?」とびっくりしていたが、すぐに続けた。
「あいつすごい頑張ってたんで納得できます」
みんなが盛り上がっていても、一歩ひいて笑っているタイプ。
そんな冨田くんの好きな言葉は“努力は裏切らない”。
それを見事形にした春だったのだ。
後輩にとっても励み、手本のような姿勢だろう。
逆に、重友くんは歯がゆい思いをしていた。
3月に入ってまさかの疲労骨折。
「投げたい。早く投げたい。強いところに投げたい」と、“投げたい病”が止まらない。
何より、引き締まった顔つき、発する言葉が違う。
穏やかでどことなく優しくて、そういう部分が減ったような気がする。
現在は普通にキャッチボールもして、調整を進めている。
冬から5、6キロ増えてお尻周りが太くなった。
となりで中嶋くんが「僕も増えたんですよ」とアピール。
自分の調整をしつつ、バッピもこなして大忙しだ。
バランス練習に取り組む見村くん(左)を見てる重友くん
バッピ役の佐藤くんと、見てるのが左から木村幸くん(2年)、古田くん(2年)、中嶋くん
練習を見ていて、見当たらない選手が2人。
模試の関係で学校に連日残っている佐藤くんと山河くん。
グラウンド整備の時間帯になって、学ラン姿で「こんばんは!」とやって来た。
「整備手伝いに来てくれたんか(笑)?」(監督)
「いえ・・・(笑)。これからアップします」(2人)
「これから!?」(監督)
相談した結果、1時間ほどの軽めのメニューということでまとまっていた。
休日はしっかり朝から練習参加。立派な文武両道だ。