トップ戦績・特集09夏の岡山県大会>絆

 「どこまで勝ち上がれるか、正直わからなかった

“ここ(ベスト8)まで”ではなく、どこまでかわからない。
主将・坂口は、敗戦後の最後のミーティングで胸中を吐露した。
岡山戦での薄氷の勝利。1回戦敗退の可能性もあったほどだった。

弱い、弱いと言われ続けたチームだった。
秋の県大会後、猛練習を重ねてきたが、春の1回戦で倉商にリベンジされた。
5月の四国遠征では守備の乱れに泣いた。
グラウンドへ戻り帰宅かと思いきや、ナイターの中でノックが延々と続いた。
6月下旬。猛練習明けの練習試合は、打線のつながりを欠くなど
その内容は不甲斐ないものだった。
試合後、1時間近いミーティング、さらに2時間の打撃練習。
最後まで残ってしまった選手の1人が、この夏活躍した緑川だった。
色々なことで一番苦労した緑川が報われないわけないんです」(坂口)
緑川はそういった苦労を、表に出すことは一切なかった。

課題と言われた下位打線。
この夏、その下位が何度も得点に絡んだ。
最後の打席、中途半端なスイングになってしまったんですけど・・・。
僕の目標は、関西で同じショートだった父さんを超えて甲子園に行くことだった。
これから頑張ります!

そう締めくくったのは杉本。彼は秋の県大会期間中に母を亡くしている。
親子でムードメーカー。いつも2人の周りには笑いが絶えなかった。
一時はショートのレギュラーも危ぶまれたが、明確な目標がそれを許さなかった。
杉本もまた、悲しみやつらいところを見せなかった。

7月の東海遠征。
病気で入院していた浜田コーチが参戦した。
2月に入院し、全員が復帰を願って手紙を書いていた。
坂口世代、最後の遠征は見に行きたい
東海遠征のために、リハビリを重ね驚異的な回復を見せた。
すごい。自分たちのために・・・」と発奮した選手たち。
常葉菊川にコールド勝ち、さらに中京大中京に3−3の引き分け。
いずれも主力同士の本気対決。打線が2アウトからつながる姿は
2週間前とは別人だった。

 
20人の絆。
坂口世代を一言で表すなら、これに尽きるだろう。
それは、ベンチを外れたスタンドを見れば一目瞭然。
1年生まで足並みの揃った必死の応援。目を奪われるものがあった。
それを引っ張る岡前と藤原。
2年生の時、2人は久保とともに、長期間謹慎していたことがある。
来る日も来る日も草むしり。グラウンドの隅っこで小さくなって立っていた。
実はこの学年は、入部当初30人以上の部員がいた。
しかし、日に日に辞めていき、20人にまで減ってしまった。
3人は退部ラッシュの流れに乗ることなく、更生の道を歩み、復帰していたのだ。
坂口。あのときはごめんな」と、けんかをした岡前が謝罪。
久保は涙が止まらず、言葉にならなかった。
そういえば、引退試合の最終回、2年生がベンチ最前列まで来て応援してくれた。
入部間もない渡辺雄は「3年生、最高に好きです」と笑っていた。
1年生が最上級生にこんなことを言うとは・・・。初めて聞いたかもしれない。
坂口世代になってから退部者がグンと減ったのも事実。

緑川、梅澤、寺嶋は「名古屋から来て良かった」と全く同じことを言っていた。
古田は春先、スタッフの前で退部宣言をしている。
チームメイトの間にも衝撃が走ったが、
大家たちが話してくれて、止めてくれなかったら野球を辞めていた」(古田)

たくさんの努力、思いが凝縮された夏。
2年半の集大成は、たった2週間弱で終わってしまう。
結果はベスト8。甲子園には届かなかった。
だが、彼らが乗り越えてきた山々は高いものばかり。
“ナイン”ではない。全員が全員で助け合いながら戦ってきた。
さらに、技術に頼ろうとするところを、意識・気持ちからチームを変えていった。
理大という優勝候補の一角を延長10回で振り切った試合。
逆転するも追いつかれ、あとは気持ちの勝負といった展開。
それをエース・大家がこん身の投球で流れを呼び、髭、久保が応えた。
頭の中を2年半の思いが走馬灯のように駆け巡る。
最後は「相手より勝ちたい気持ち」が上回ったのだ。

倉工戦、最終回。坂口が代打で打席に立つと、
スタンドの声援が人一倍大きくなった。ファンのおじさんも叫んでいる。
1年生の叩く太鼓がはち切れんばかりに揺れている。
思いは一つ。“坂口、ありがとう。最後だ、頑張れ”。

本当に支えられた1年だったと、ひしひしと感じています。
監督やコーチの方々、弱いチームをここまで見守って下さって・・・。
自分が関西でキャプテンをさせていただけたのは、言うまでもない誇りです。
最高のメンバーと最高の終わり方でした。僕の野球人生最高でした!

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最後に私事ですが、この場をお借りして
保護者の皆さんには心から「ありがとうございました」と言いたいです。
部の環境作りに徹し、なおかつ一歩下がって野球部を見守り続けていました。
特に、他のお子さんを自分の子どものように応援するところが大好きでした。
いつも温かく接していただきありがとうございました。
皆さんと一緒に応援できた時間は、とてもいい思い出になりました。

 

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